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Heart Trust Communication

モルダウをはじめて聞いたときだった

2018年11月17日
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ありがとうございます。
心理カウンセラーの島幸樹です。


はじめて聞いたのは小学5年(か6年)でした。
音楽の時間だったと思うのです。
先生がオーケストラを流してくれはって、それについてああだこうだを習う授業。

最初しばらく優しい音でゴニョゴニョゴニョゴニョと流れ、
しばらくしたらあの壮大なメロディーが、聞いている僕の体全体を包みこんだような感じでした。

胸の真ん中なのか、奥の方なのか。
そのあたりからゾワゾワゾワってしてきて、力強さがわいてきて、体の、外からは見えない部分が震えていました。
そして次の瞬間は、こんな感動を生み出せる人って、何者?って僕は思いました。

けど、その思いを、その授業が終わったあとに周りの誰に言っても伝わりません。
伝わらないというか、これを書いている今もそうなんですが、うまく伝えることができないんです。
作曲者のスメタナの話とか、この音楽ができた背景とか、合唱曲にもなっていることとか、良かったとかキレイとかフルートとかクラリネットとか、そういうのは言葉にできるんだけど、あの曲をはじめて聞いた瞬間に僕の心の中で起きたシンフォニーは全然うまく表現することができません。

だからあのとき、クラスの友だちの誰とも共有することができなかったことを思い出します。
小学生男子で音楽の時間に聞いたクラシックの音楽に感動するのは世間一般的には珍しいことだったのかもしれません。
休憩時間にドッジボールをする約束や、5時間目の時間は眠たいということなんかに流されてしまったのでした。
唯一、先生が僕の話を聴いてくださり、翌日、僕は先生に呼び出され、何かと思えば1本のカセットテープをくれました。
そのテープには前日に聞いたオーケストラのモルダウがダビング(もう死語ですか?)されていました。だから家でも聞くことができるようになったんです。
さらに先生はテープにモルダウだけでなく、有名なクラシック曲で先生がチョイスしてくれたものがぎっしりと入ってきて、それはそれは嬉しかったです。モーツァルトやチャイコフスキーやヴィバルディー。世の中にこんな素晴らしい曲を作れる人がいるのか!と、いちいち一曲一曲に驚嘆したことを覚えています。

だけど。

そのテープで聞いたときの感激と、その前日にはじめて聞いたときとでは何かがちがうんです。
モルダウをはじめて聞いたときの、あの体全体が動いた感じは、誰ともちがっていたし、翌日以降に聞いたものともちがっていました。
たしかに今モルダウを聞いたら、あのときに全身が震えあがった自分を思い出すんですが、それはそんな自分をメタ認知としてちょっと客観的に見ているような感じ。まさにあの瞬間のものとはやっぱりちがいます。

その何かゾワゾワしたあの感じのあとに、僕はそれをスメタナというチェコの音楽家が祖国を思ってつくった曲なんだということを知ります。
そこは誰とでも共有できるし、あの曲をまた聞きたいという欲求を先生はわかってくれたし応えてもくれました。
だけど、あの瞬間の感動そのものは誰かと共有することって、できないのかな……。
そのころ、僕が考え続けたことはそういうことでした。

それよりは休憩時間のドッジボールの方がワクワクするし、5時間目の授業は眠たくてフワフワしてボーっとしてくるし。

だけど、それから何年も考えていて、また僕は考え方も変わってくるようになりました。
モルダウをはじめて聞いたときの僕の心の「あの感じ」も、ドッジボールのワクワクも、5時間目の授業のフワフワも、どれもそのときに誰かの心に生じた「あの感じ」であるということには変わりない。全部同じです。内容がちがうだけで、どれもその人その人の心の中で生じる「あの感じ」にはちがいありません。

そうだ、そこなんだって思ったのです。

スメタナという人が書いた曲で、チェコの作曲家で、川の流れが描写されていて、このあたりのフレーズにどういう情景を感じられて…。
というのは知識であったり思考のなせる業ですが、でもそれよりももっと、間違いなく確実で誰も疑うことができないことは、僕がはじめてモルダウを聞いたときの「あの感じ」。

そして僕がそれをわかってもらいたくて共感してほしくて友だちに語ろうとしたけれど、うまくそれが伝えられず、それよりもドッジボールのワクワクの方がそのときの友だちにとっては大きかったのも当然なわけです。
だってその彼にしてみたら、授業が終わったその瞬間に心と体を支配したのはドッジボールのワクワクだったのだから。しかたがない。
人それぞれ、その瞬間瞬間の「あの感じ」があります。

ドッジボールのワクワクに勝てなくてもそれはしかたがない。
その彼だって僕を幸せにするために生きているわけじゃないんだから。

ただ、僕は、この自分自身の身に、モルダウをはじめて聞いたときの「あの感じ」が確かにあったことを今でも心に残しておこうと思う。

たとえばあれを聞いたときに僕が「日本人が作りそうな曲だなぁ」とか「この曲はまるで山に遠足に行くときに聞くとテンションがあがりそうだなぁ」と考えたとしたら、それはあとから「やっぱりそんなことないわ。気のせいだった」と思い直せば変えたらいい。自分が間違った理解だったと思うなら訂正すればいい。
だけど、モルダウをはじめて聞いたときに体が覚えた感覚は絶対に間違いないはず。気のせいとかじゃないはず。
友だちはドッジボールの方が夢中だったし、目下の問題は5時間目の授業の眠たさだったのかもしれないけど、だからといってあのときの僕の感じたことは取るに足りないものだったわけでもないはずです。

わたしは(あなたは)、そのとき(今)、どう感じたのか。

世界は、それで成り立っているように思うのです。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

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心理カウンセラー・講師 島幸樹(しまさちき)
Heart Trust Communication 代表。
カウンセリングと心理学の学びをご提供し、自分らしい生き方を見つけるお手伝いをします。
専門は教育、発達心理学/カウンセリング心理学。学習塾の経営を経て、現在は講師・研修業と心理カウンセリングを行っています。
大阪生まれ。奈良在住。
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